キャラメル・リボン

バターで焼いた菓子特有の香り。
カスタードクリームが少しこげたところが
今にもスプーンでつぶしたくなるような甘い香りで
ココロを誘ってたまらないけど、
まだまだ、オーブンの中では
軽焼饅頭(シュークリーム)が膨れているところだし、
チーズケーキも冷やしておかなきゃ。
…と、思っていたら。
「メリー!」
「わっ、バカピピン!まだ早いだろう?」
今日は我が悪友親友にしていたずら仲間、
ペレグリン・トゥックの生まれた日。
ビルボの誕生日とまではいかないけれど、
ゼッタイ喜ばせる自信をもってご馳走の用意を
してたっていうのに!
「早くないよ、だって御祝いには皆呼んだんでしょ?」
「そりゃそうさ、フロドやサム、ボルジャーたちを
呼ばないでパーティにならない」
「それじゃ、遅すぎるんだよね」
「なにがさ」
「僕が欲しいものを君がくれるってこと」
「何?」
「ちょっと、目つぶっててよ」
時々子供のように無邪気になる声で、ピピンが言うので、
オーブンが気になるけど、ちょっと目を閉じる。
…けど、なんかちょっと、ついまた目を開けて。
「え?あっ……」
目の前にあるのは、きれいなまつげを閉じた顔。
「だめだよお、王子様小人のキスで目を開けてくれなきゃ」
そんな御伽噺はどこにもない。
「ピ…ピピン。それってどういう……」
「それとも、嫌?」
「嫌じゃ……ないけど…なんで今なんだよ……」
「誕生日だから」
ああピピン、我が友は時々どんな知恵者よりも勝るよ!
この世に自分が生まれ出た日に望むものがそれなの?
「皆来ちゃうから、その前に。……お願い」
「扉、鍵かけてあるか?」
「うん」

お湯が沸きすぎてやかんが怒り出し、
少しだけ焦げ目のついた軽焼饅頭が焼きあがった。
もうすぐ皆やってきて、声をそろえて言うだろう。
「誕生日おめでとう、ペレグリン!」


メリピピで甘いハッピーエンドをというあゆりんさんのリクエスト。
この二人をこんなふうに描くのは初めてで、とても楽しかったですv
リクエストありがとうございましたv



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